屋上の狂人
2006/04/06・07 Thu・Fri



「父帰る」が終わると、拍手とともに幕が降り、明かりがつく。
10分間の休憩になるが、ただただぼう然として過ごしました。
1回目は生のお芝居のすごさに放心状態。歯を食いしばってたので顎がだるい。
2回目は流石に余裕があったので、泣きじゃくる友達を観察。でも2回目でも興奮してました。
どきどきと興奮冷めやらぬまま、次の屋上の狂人を待ちました。

音楽が変わる。
明るい、かわいらしい音楽がなり始めると、照明が落ちて幕が上がっていく。
真っ暗な中に流れる音楽。次第に明かりがついてくると、屋根の上に座った一人の男。剛です。
後ろのスクリーンには、青空と「屋上の狂人」の文字が浮かぶ。
義太郎は白い薄手の着物。裸足。髪はツンツンしてます。
すごく似合っていてかわいい。屋根に足を伸ばして座って体をふにゃふにゃ。笑ってる。
手を伸ばしたり、目線をきょろきょろしたり。ゆっくりしたくたくたした動き。楽しそう。
そこへ父がやってくる。「義ー。義はどこへ行った〜!」
きょろきょろ辺りを見回して、屋根の上に義太郎がいることに気付いて頭を抱える。
「また、あんなところに!この暑いのに帽子も被らんで!」と父。
「おい、義!降りてこい!」と父が声をかけても、まるで義太郎には届かない。
相変わらず、手を伸ばしたり、体をゆすったりして、心ここにあらず。
「吉ー!吉ー!」と下男の吉治を呼ぶと、ほうきを持った眼鏡の坊主頭の男がやってくる。
屋根を見て、あぁまた登ってるといった感じで笑いながら上を見上げる吉治。
「若旦那ぁ、降りてきてくだせぇ!」という吉治の声も届かない。
すると父が、そのほうきで義太郎をつついて下ろせと言う。
「そんなことをしても無駄です。それよりも、若旦那の好きな油揚げをこうてきましょ。」と吉治。
「いいから、つついて降ろせ!」と言いながら、父が吉治からほうきを奪う。
屋根に向かってほうきを振り上げ、ジャンプしながら義太郎を降ろそうとするが、届かない。
しばらく下で騒いでいると、やっと視線をゆるっと下に向けて、義太郎が話す。

「なんやぁ〜?」

これが義太郎の最初の一言。声が高い。ふにゃぁ〜んとしている。とにかくかわいい。
さっきまで賢一郎の固い声を聞いていたので、あまりの可愛さに私は崩れ落ちました。
「降りてきてくださせぇ!」と下から言うと「いややぁ!」と義太郎。
「金毘羅山の神さんがわしに向かっておいでおいでしよるぅ!」と楽しそう。
どうやら義太郎には、向こうの山に神様と神様の住む殿が見えるようだ。
そこはすごく綺麗なところで、綺麗な音楽が聞こえてくるらしい。
「わしも行きたいなぁ〜!」と言いながら、ふらふらと屋根の上を歩き回る義太郎。
それを下から見ている2人は気が気じゃない。いつ落ちるかと思うとはらはらしている。
しかもどうやら、1度神様が呼んでいると言って屋根から飛び降りたことがあるらしい。
その時に片足を使えなくしてしまい、義太郎の右足は動かない。
歩く時はびっこを引きながら歩いている。跳ぶときは左足だけで器用に跳ぶ。
そんなことがあっても、楽しそうに何度も何度も高いところへ登るらしい。
あまりに高いところに登るから、仕方なく家に閉じ込めておいたら死んだようになってしまう。
だから見かねて外に出すと、屋根に登る。この繰り返しのようだ。

「若旦那が悪いわけじゃない。全部若旦那に憑いてるキツネの仕業じゃから」と吉治。
「若旦那はな〜んにも知りませんのや」と笑いながら父をなだめる。
すると父は「ほんまにキツネか?キツネが高いところに登るなんて聞いたことがない」と。
そして「実はキツネじゃなく、わしは猿が憑いとるのではないかと思うのや」と父。
義太郎が産まれる前に、猿を大量に撃ち殺したらしい。それで猿が憑いたのではないかと言う。
しかも普通は気がおかしくなったら家に篭るのに、高いところにばかり上がる所為で
世間に自分が気がおかしくなったことを宣伝しているような状態になっている。
巷では勝島家のおかしな長男は有名になりつつあり、なんとも情けないと父は嘆いている。
そんな話をしている間も、義太郎は屋根を跳びまわったり、ふらふら踊ったり。
カラスの鳴きまねをしてみたり、山の方へ向かってずっと楽しそうに笑っている。
下にいる吉治がほうきで掃除をするのを見て、屋根の上でほうきを使うのを真似たりしている。
父が吉治に「屋根に上がって、義太郎を降ろしてこい」と命じる。
義太郎は他の人が屋根に上がってくると、ものすごく怒るらしい。吉治は嫌そうだ。
しかし行けと言われ、仕方なく屋根に上がる準備をする。

そこへ、近所の藤作がやってくる。高橋克己さんです。
妙に似合う、短パンにちゃんちゃんこに腹巻みたいな格好で出てきたので、場内には笑いが。
ここに限らず、屋上の狂人はずっと客席からは笑い声が出てました。
義太郎のやることや、父の猿を打った話など、楽しいところではみんなで笑ってました。
藤作は義太郎を見ながら「若旦那はまぁた屋根ですかい」と上を眺める。
困っている父に「まぁ、弟さんは立派に育ったからええではないか」と藤作。
父は「当たり前じゃ。2人とも気がおかしかったら、わしはどうしたらいいんじゃ」と呆れる。
すると藤作は「近所に有名な巫女さんがきているから、若旦那を見てもらったらどうか」と言う。
しかし父は、今まで色んな人に見てもらったが、何も変わらなかった。
しかも有名な巫女さんなら、代金も高いんだろうと尋ねる。
すると藤作は、巫女さんは金毘羅山の巫女さんだから、若旦那が見ているものと同じ。
普通の巫女さんよりも、何か効果があるかもしれない。
しかも治らなければ御代はいらんと言うてると言います。
それならば、と父が承知すると、藤作はすぐに連れてくるからそれまでに若旦那を屋根から
降ろしておいてくだせぇと言って、巫女を呼びに行ってしまう。

吉治がやっと梯子を持ってきて屋根に上がろうとする。
「さぁさぁ、若旦那。私と一緒に降りましょう。こんな暑い日に屋根にいては、熱が出ますよ」
「いややぁ!来るなぁ!」と駄々をこねる義太郎。
それでもかまわず吉治が登っていくと、「来るなぁ!」とすごい勢いで怒り出す。
それにひるみながらも、吉治が登って義太郎を追い詰めても、ひょいと逃げられてしまう。
義太郎と吉治の屋根の上での追いかけっこが始まりますが、義太郎は軽々と跳びまわる。
遂に吉治が「旦那様ぁ。恐いぃ〜…」と半泣きに。
しかし、連れてこなければ晩飯は抜きだと言われ、仕方なくもう1度義太郎を捕まえようとする。
じわじわ追い詰めて「あ、あれはなんでしょ?」と指さすと、義太郎がそちらを向く。
隙あり!と跳びかかると、義太郎は屋根にうつ伏せに寝転んでしまった。
「いややぁ。わしに触ると、神さんの罰がくだるぞぉ」と言いますが、吉治がその隙に捕獲。
首の根っこを掴むと「んにゃぁ」と一声。そのまま首根っこを持たれて屋根から降ろされる。
「捕まったわぁ。吉はすごいなぁ」と言いながらも、やっぱり楽しそう。
「旦那ぁ!下に来て若旦那を受け取ってくだせぇ」と吉治。
義太郎は「捕まったぁ」「すごいなぁ。吉、すごいなぁ」と言いながら、吉治の頭を撫でている。
父が梯子の下に来て、吉治と一緒に義太郎を下に降ろす。
義太郎は片足が使えないから、下から支えられながら、片足で梯子を降りていく。

屋根の上で騒動が起こっている間に、母と女中も登場。
屋根の下の炊事場で、食事の支度をしているようだ。
義太郎をとりあえず長椅子に座らせると、藤作が巫女を連れて走ってきた。
巫女に挨拶をして、義太郎の症状を伝える父と母。
物心ついたときから高いところが好きで、床の間や仏壇に上がる幼少期。
少し大きくなったら木登りを始めて。更に大きくなったら屋根に上がるようになったらしい。
それはキツネが憑いているからだという巫女。
父は「猿でなくて…?」と言うが、あっさり「キツネです」と言われてしまう。
巫女は女中に出されたお茶を飲んでから、私が見てみましょうと言う。
「よーく聞け!私は金毘羅大御殿から参った使いのものであるぞぉ!」
義太郎の頭の上に手をかざしながら、お払いが始まる。
しかし義太郎は「お前、金毘羅様に会ったことあるけぇ?」とお払いの邪魔をする。
それを後ろから吉治がしっかり捕まえて「しー!」と指を立てる。
巫女は「神の姿が我々に見えるはずはない」と答える。
「わしは何度も会ったことがあるけぇ!金毘羅様は白い髭で金の冠を被ったおじいさんじゃ。
 わしの1番のお友達じゃぁ!」と義太郎は笑って立ち上がり、椅子から落ちる。
それを吉治が引っ張り上げて椅子の上にもう1度座らせると、お払い再開。
「捕りついているキツネめぇ!この声が聞こえるなら出て行かぬくぁ〜!」巫女はお払いを続ける。
「お前みたいなおなごが金毘羅様の使いのわけあるかぁ!」笑う義太郎。
「これは相当タチの悪いキツネです」と巫女は言い、神の声を聞くためのお払いを始める。

「おんかたびらかぁ〜おんかたびらかぁ〜…」と御幣を義太郎の頭の上で振る。
すると義太郎も一緒になって「おん!かたびらかぁ〜!」と手を振り出す。
それを後ろから吉治に止められるが(抱きかかえるように止められています)
また別のお払いを始めると、それも同じように真似を続ける義太郎。
ありがたい神のお言葉だとは全く思っていなく、楽しそうに物まねを続ける。
すると、巫女がばたん!と倒れてしまった。
一同が不思議に思ってそーっと覗き込むと、巫女はがば!っと起き上がる。
一同が驚いて離れると、巫女は叫びながら跳びまわりだす。どうやら神が乗り移ったよう。
「我はー金毘羅大御殿なるぞぉぉぉぉ」巫女の声が違います(かなりおもしろい声)
ははーっと跪く一同。義太郎だけが長椅子に座ったまま、うっすら笑いながら巫女を見ている。
「このものにはキツネが取り憑いておる〜。払いたくば、青松葉をくすめよぉぉ」
神のお言葉に再びははーっと跪く一同。巫女はまたばたん!と倒れてしまう。
一同がまた恐る恐る近寄るとむくっと起き上がり「神はなんといいましたか?」と。
どうやら神が乗り移っている間は記憶がないようだが、神の教えは絶対である。
お言葉を聞いたのならずぐ実行しなさいと言う巫女。
父は吉治の青松葉を持ってくるように言い、吉治は急いで取りに行く。
母は「そんなむごいことをぉ…」と言うが、辛いのはキツネだから義太郎に問題はないと巫女。
藤作と吉治が青松葉をくすめ始めると、ものすごい煙が出始める。
そこに父は義太郎を連れて行って、煙を義太郎に被せると、義太郎はむせてしまう。
目にも染みるようで、こしこし目をこすりながら「いややぁ。いややぁ〜」と泣いている。
無理やり羽交い絞めにされて、煙の中に頭を突っ込まされる義太郎。
咳き込みながら何度も「いややぁ!」と目をこする。

そこへ弟の末次郎が帰ってくる。
「何をしとるんですか!」と言うと、父達は慌てて義太郎を離す。
すると義太郎は「あぁ〜末やぁ」と末次郎の方へ咳き込みながら寄って行く。
「あんなぁ、みんなでなぁ、松葉をくすめるんよぉ〜」と目を擦りながら末次郎に訴える。
末次郎は自分の後ろに義太郎を庇いながら「父さん!」と怒り出す。
「また馬鹿なことをして!」と言うと「神さんのお言葉なんや」と父。
「何が神ですか!こんな詐欺師みたいな女を呼んで。
 お医者さんが治らんって言うたもん、治るわけはないでしょう!」と末次郎。
藤作に早くその巫女を連れて帰るように言う。
巫女はその言葉を聞いて怒り出し、再び自分に神を乗り移らせる。
弟の言葉をしっかり聞いたから、自分に逆らうものは不幸になるぞと神が言う。
しかし末次郎は、神が乗り移っている最中の巫女を蹴り飛ばす。
巫女は慌てて「神が乗り移っている私を蹴るとは何事だぁ!」と怒り出す。
しかし末次郎は怯まず、何が神だ、出て行け!と巫女を追い払う。
「私を蹴ったその足から腐り始めるんやぁ!」と捨て台詞を吐く巫女。
藤作に連れられて、強制退場。

末次郎は父になぜこんなことをするのか、なぜ兄さんを正気に戻そうとするかと問う。
「兄さんは屋根にさえ上げておけば、毎日楽しそうにしている。
 こんなに毎日楽しそうな人が、日本中他にいますか?
 それをもし今兄さんを正気に戻したらどうです?
 24にもなって、いろはの「い」の字も知らんし、経験もないし、なんもできひん。
 恐らく、日本中で1番不幸な人間になりまっせ。」末次郎が訴える。
父は「しかし、このままだと兄さんは一生お前のお荷物だぞ?」と言うと、末次郎は
「お荷物だなんて思ったことない。
 わしは大きくなったら、山の上に高い塔を建てて、そこに兄さんを閉じ込めておくんや」
末次郎の言葉に胸を打たれた父達。このままでいいか、という結論に達する。
「そういえば、義はどこ行った?」と父が言うと「あそこです」と屋根を指して笑う吉治。
義太郎はいつの間にか屋根に上っていた。また遠くの山を見て、幸せそうに笑っている。
それを見て微笑む父と母。そして吉治。家の中に入っていく。

末次郎だけが残り、屋根を見上げる。
「普通の人間なら、青葉をくすめられたらどんなに怒るか。でも、兄さんはもう忘れとる。
 神さんが乗りうつってるのは、兄さんなのかもしれん。」
笑いながら、屋根を見上げ「おーい、兄さん!」と末次郎。
ゆっくり視線を下に向け「あぁ〜、末やぁ〜」と嬉しそうな義太郎。
「見てみぃ!わしの大好きな金毘羅さんが見えるでぇ。綺麗やなぁ。」と義太郎。
「あぁ、見える。綺麗やなぁ」と末次郎。
「あ!わしの大好きな笛の音ぇが聞こえてきた!綺麗やなぁ」と義太郎。
「あぁ、綺麗やなぁ」と末次郎。
屋根の上と下で、2人は夕日を浴びながら遠くの山を見ていた。




義太郎のかわいさに倒れそうになった。というか、実際私は椅子の上で崩れてました。
間延びした高い声、口元が緩みっぱなしの楽しそうな顔、どこまでもスローな動き。
それでいて屋根の上をぽんぽん跳びまわったり、走り出したり、早い動きもする。
目を細くして山を見ているのに、何かおもしろいことを発見したときは目を大きく開いて。
うふふふ〜と楽しそうに笑って、心から幸せそうで。
かわいくってかわいくって、網があったら捕獲しました。
さっきまでは「父帰る」で厳しい顔を見せていたのに、10分間でどうやって切り替えるんだろう。
全員の動きがコミカルで、笑って笑ってそして萌えて(笑)楽しかった〜。
でも最後には兄弟愛にほろっとさせられる。きちんと落としてくれてよかった。

6日と7日では、義太郎の動きが微妙に違いました。
大まかなところは同じだけど、6日は屋根の上で相撲を取るジェスチャーをしてました。
7日の方が、吉治に捕まった時に、たくさん吉治の頭を撫で回しましたよ〜。
その日の気分や乗り具合で変わってくるんでしょうね。
あと、7日は「父帰る」に続いて汗をすごくかいていて。
義太郎が屋根から下りてきたとき、母が義太郎の汗を拭くんですけど。
そのときに7日はものすごい真剣に汗を拭いてました。すごかったんだろうな。

何も知らないまっさらな子どものような24歳。
それでいて、みんなには見えない、何か特別なものを見ている。
何も持っていないような、何か大きなものを持っているような、不思議な子でした。
みんなから愛されて、幸せそうに笑っている義太郎を見ると、かわいいけど切ない。
愛おしいけど、悲しい。そんな不思議な気持ちになりながらも、結局はただただ

「ほしい、この子」

って感想ですかねぇ。

これが終わると、全員ステージの前に整列して礼をしてくれます。
剛は1番最後に出てきて、しっかり深々とお礼。
出てきたときの顔はさっきまでの義太郎でも、賢一郎でもない。
完全にいつもの草なぎ剛の顔。これがびっくりする。なにも引きずってない。
でも全てを出し尽くしたような、気が抜けてるんだけど輝いた顔をしてました。
1礼したら全員下がりますが、剛だけ少し下がって真ん中でもう1度一人で礼。
6日は何かもじょもじょっと口を動かして礼をしてました。
7日ははっきり「ありがとうございました」って口が動いて、ここが1番感動。
ヨコシマな見方をすると。
汗をかいて、着崩れした白い薄手の着物、髪ボサボサの剛が色っぽい。
礼がまた綺麗でね。このビジュアルで、この至近距離で、その色気は反則ー!って気分。


「父帰る」と同様、セリフの順番や言い回しは違うところも多いと思います。
金毘羅様に関しては、難しい言葉もあって正しくはよくわかりません。
巫女に神が乗り移った時は、声がすごく低いしゃがれ声になるので、よく聞き取れないところも。
でも雰囲気が伝われば、と思ってますので、細かいところはお許しください。